SHISHAMOの大事にしてるもの
自粛要請は恐らく延長されるだろう。
飲食業界ではこの延長をそのまま飲む人もいるだろうし、もはや「耐えられぬ」と営業再開に踏み切る人も出てくるだろう。
どちらも責めることなどできやしない。みんな生活のために必死だ。
このまま自粛が続けば経済は滞る。経済が滞ればリーマンショックを凌駕する不況に陥るだろう。そうなれば世間は失業者で溢れる。そういた就職難民をいよいよ国のお金では賄いきれなくなり、国そのものが破産しかねない。国の破産は十分あり得る話だ。
”個人”の今後の身の振り方はその更に今後の”世界”に多大な影響を与える。日本はいま、間違いなく重要な局面に晒されている。
さて、あなたは今後どのように身を振るつもりだろうか。
こうして問い掛けたのはいいものの、ぶっちゃけ僕は自分で自分がどうすればいいのか分かっていない。
分かっていないと言えば、いきものがかりのボーカルが「可愛いのか、可愛くないのか」論争がどう終着したのかよく分かっていないし、グルテンフリーってよく聞くけどグルテンってなにか分かっていない。
グルテン……。
話がそれた。今後の身の振り方の話である。
政府の要請、世間の声にしたがって自粛を継続するべきなのか、それとも考え新たに独自の信念に従って、自粛の流れに逆らってみるべきなのか。一体どうするべきなのか。
べきなのか。ベルなのか。ポカホンタスか。それともアリエルか。
日本ではいったん[世間]の空気がある方向に構成されると、この[世間]の空気には、だれも逆らうことができないのだ。みんな[世間を離れては生きてゆけない]と思っているからである。日本人は、[世間]から[はずされる]ことを極端に恐れている
なぜ日本人はとりあえず謝るのか:「ゆるし」と「はずし」の世間論:著者 佐藤直樹より
世間からはずされることを恐れた人間がとる行動は”同調”だ。この世の正義は大多数の”同調”からなりうる。[いじめ]を例にとるとわかりやすい。
いじめには[加害者・被害者・観衆・傍観者]が存在する。
自身の強さを知らしめたいA(加害者)が始めたB(被害者)への嫌がらせ。それを面白がるするC(観衆)と関わりあいを拒んだD(傍観者)
これが閉鎖的な集団の中(クラス、職場など)で行われたとしてA(加害者)がD(傍観者)へ「お前も投げろよ」と石を差し出されたならば……。
その後のDの行動はきっと”同調”なのだ。
自衛のためとはいえど、こうして自身の立場を変え加害者へと容易に転身できる残忍な一面が日本人には、ひいては人間にはある。僕はこれに思う出来事がいくつかあるし、読者の方にもきっとあることだろう。
改めて今回の自粛についてを考えたい。なぜ、自粛しているのだろうか。愛する人を守るべき時にふさわしい行動は本当に自粛なのだろうか。考えることを放棄していつの間に、ただ同調しているだけだったりする。だなんてことはなかろうか。
今一度、自分の心に問い掛けたいものである。
あなたは、さて、どうだろう。
ところで僕は、残忍な一面という言葉を先述したのだが、実はまだ他にも残忍な一面を垣間見せるアーティストが存在することをご存知だろうか。
シリアスにマジの話だ。
ことの始まりはSHISHAMOの『君の大事にしてるもの』の冒頭の歌詞をうまく聞き取れなかったことに端を発する。
歌詞よりもメロディーな僕はたびたび、”メロディー”だけにフォーカスして音楽を嗜むことがある。例えば昔、恋人と「いい曲じゃない?」だなんて『Tyler swift / We Are Never Ever Getting Back Together』を嗜んだりしてた。
そんなだから僕は『君の大事にしてるもの』をサビとメロディーから「純真な乙女がもっと彼氏に”アタシ”を見てほしいという想いを綴った歌かなぁ。愛くるしいなぁ」ぐらいにしか捉えることができなかったのだが、まるで違った。
軽快なドラムでINし、親しみやすいイントロのまま愛らしいボーカルが聞こえてきたらそれが〈宮崎 朝子さん〉の歌声である。(今回初めて知ったのだが、僕と同い年)
「ワタァシとその、レスポーン……」彼女が歌うのに合わせて僕も同じように歌ったらふと、この”レスポーン”が気になった。
レスポーン……。
聞けばこの”レスポーン”曲中のいたる所で登場する。レスポーン……。だから僕は調べた。レスポーン……。
「もしかして リスポーンとは」と僕を傷つけないようそっと口添えしてくるGoogleの優しさが痛い。だが、何度聞き返しても間違いなく「ワタァシとその、レスポーン……」だ。おかしい。何かがおかしい……。まるで狐に包まれたような気分だった。
スウェーデンからきた悪魔みたいに赤い扉を開けた。そこには宮崎 朝子がいた。戸惑いを隠せない僕を無視して彼女は、世界に一つだけの花を摘み取るかのようにそっと、マイクを拾い上げた。彼女が眩い光に包まれる。
やれやれ。という言葉とほんの少しの愛が、僕の”口”と呼ばれる場所から溢れたのは、必然だったのかもしれない。宮崎 朝子は眠れる人魚を起こさないように、そっと呟いた。
「ワタァシとその、レスポーン……」
そばを大きな猫がすぎる。
ぐらいに、間違いなく”レスポーン”なので、このままではラチがあかないということで歌詞を調べたら、結局のところ”レスポーン”ではなく、”レスポール”。
「私とそのレスポール、どっちが大切なの」って
面倒臭いこと聞いちゃって
『君の大事にしてるもの』より
「あーね、レスポールね!」とは、ならない。(レスポールはギターのモデルの名前。つまりギターのこと)しかしそんなことはこの際どうでもいい。着目すべきは歌詞を読むことで明らかになる”東○圭吾”顔負けのストーリー展開と、パラノーマルアクティビティ面目丸潰れのサスペンスである。
僕は今回それを発見した。
ここから先は思わず目を覆いたくなるような文が散見する。特に男性の方は気をつけたほうがいいだろう。叶うならばこんな文章は闇に葬りたい。だが、それはできない。僕は発見してしまったのだから……これは義務だ。
SHISHAMOには、ひいては世の女性には……残忍な一面が……ある。
それでは、歌詞とともにこの曲を。いや、この恐怖を分かち合おう。
「私とそのレスポール、どっちが大切なの」って
面倒臭いこと聞いちゃって
「お前に決まってんじゃん」って
半分私が言わせたようなものじゃんか
『君の大事にしてるもの』より
出だしから、これである。「私とそのレスポール、どっちが大切なの」。
世の男性が”生まれてから死ぬまで可能であれば聞きたくないセリフ”堂々の一位が早速のお出ましである。リングで言うところのオープニングから貞子。ワンピースで言うところの1ページからワンピース。である。残忍だ……。
なぜこのような発言が飛び出たのかは神のみぞ知る。が、予測はできる。
きっと[不満]なのだ。
女性は決してたった一夜ともにしただけの男性にこの言葉は贈らない。つまり、登場する”君”とは彼氏のことを指す。僕の推理が”君”は”彼氏”だとそう指し示している。
そして対する彼氏の返答はこうだ。
「お前に決まってんじゃん」
彼氏はまるで彼女の不満に気づけていない。レスポール(ギター)を抱えながら「お前に決まってんじゃん」だ。絶対あかんやつである。
いまだかつて、ここまで盛大に死亡フラグを掲げた登場人物がいただろうか。僕の記憶の限りだとヤムチャぐらいである。まさかの彼氏、ヤムチャ超えのポテンシャルの持ち主。
彼女の中でこだまする。
「お前に決まってんじゃーん…じゃーん…じゃーん…ーん…」
って、半分私が言わせたようなものじゃんか。
「じゃあそのレスポール、ベランダから投げてもいい?」
しょーもないこと聞いちゃって
「冗談きついわ」なんて笑う君ちっとも冗談じゃないんですけど
『君の大事にしてるもの』より
「じゃあ、焼肉にしようか」
「じゃあ、明日にしようか」
「じゃあ、付き合おうか」
なら、分かる。
「じゃあそのレスポール、ベランダから投げてもいい?」
いいわけない。
でも、もうダメなのだ。彼女はすでにオコなのである。もはや理性を失った虎だ。完璧なまでにムカ着火ファイアー状態なのだ。菅田将暉ならいず知らず、目の前のレスポール抱えた”雑魚”ではもはや太刀打ち叶わないのだ。
ここで雑魚が察すれば全ては丸く収まった。「あ、好きって言ってたアイスあるけど食べる?」ぐらい言えてれば尚のことよかった。でも違う。
これが雑魚たる所以だ。
「冗談きついわ」なんて笑う君
笑っちゃうんだよ。そこで、君は。
「お前、そろそろまともに働いたら?彼女との今後もあるんだろ?」
「冗談きついわ」
みたいな会話昨晩してんだよ。どうせ、君は。
宮崎 朝子は歌う。
ちっとも冗談じゃないんですけどー⤴︎⤴︎⤴︎⤴︎
おそらくもう、この時点で彼女の中からの彼氏への愛は消え失せた。見切りをつけてしまったのだ。僕は知っている。見切りをつけた”女性がどれほど怖いか”を。
君の大事にしてるもの
私も同じくらい大事にできたらいいのに
全部壊してしまいたくなるの『君の大事にしてるもの』より
彼女はきっとこう思ってる。
「いいんです。彼なりの好きがあることはいいんです。でも、それが”いっつも”ってところが気に食わないんです。それじゃ、ただの子供じゃないですか。彼氏じゃない。
友達の彼は”沖縄”とか”ディズニー”とかちゃんと出掛けたり…。帰りがけには、プレゼント用意してたりなんかして。
私、ただ笑って「いいねー」としか返せなかったのが悔しくて。だって彼とのデートって本当、家ばっかりで。それでレスポール放さなくって…。
エッチだけはして、あとは放りっぱなし。私はデリヘル嬢かよ。
私もう、26ですよ。結婚の話とか、子供の話するといっつも「冗談キツいわ」ってこっちが冗談キツいわって感じです。
だんだん、あのレスポールすらも憎くなってきて困ってるんです。私も同じくらい大事にできたらいいのに。できないのが辛い。
いつまでも、シャカシャカやって。アタシよりレスポールかよ。だなんて…。これって嫉妬なんですかね。やだな。
時々、あんなの壊してしまいたくなるの。そうすれば、”楽になるかな”なんて……。
yeah……。」
ライダースもジョーダン6も
ヴィンテージのTシャツも
あのギタリストのサイン入りのエフェクターも
GTO全25巻も
君のレスポールと一緒にぶっ壊してあげる
君のそばには私以外いらないじゃない君の大事にしてるものより
ラインナップが[THE・男の好きなもの]すぎて筆者の僕は分かりみが辛い。GTO全25巻とか、たまに読み返すと最高じゃない。でも、もうだめ。そんなことはもはや、彼女には言い訳にしか聞こえない。いや、言い訳以下のクズだ。
レスポールと一緒にこれらがぶっ壊された時に彼氏が受けるショックは計り知れない。僕ならそのまま立ち直れずに、二次元の世界へとのめり込み外界への扉を閉ざす可能性すらある。大いにある。
だが、もはや手遅れなのだ。彼女はもう、随分と前から冷めてる。そしてその決定打を放ったのは彼氏自身だ。自業自得である。致し方あるまい。かける言葉は無い。
”君のそばには私以外いらないじゃない”
この言葉にはいくつか物申したいところがあるが、それを彼女は許さない。「冗談キツいわ」などと言おうものならジ・エンド。[愛くるしい猫の動画]を持ち出しても無駄。
私が大事にしてるものは
君だけなのに、ああ、君だけなのに
なのに、ねぇ 君ときたらさぁ『君の大事にしてるもの』より
この状態となった彼女とは決して争ってはいけない。決してだ。初号機の暴走状態よりも百万倍タチが悪い。こうなった女性の前で男性がなせる術は無い。この状況を打破できるのはジョージ・クルーニーと武井壮。
まず「ねぇ」がでかい。
この世にはいくつかの「ねぇ」が確認されているが、この場合の「ねぇ」はいわゆる不可避のDeath(死)だ。
「よくもまぁ、そんな昔のことを」と、身に覚えのある”自らの失態”をこれでもかとお披露目してくる。もちろん返す言葉は無い。「あの時だって、そうじゃない!あなたは…」
詰み。
晴れた空とレスポール
宙を舞う君の宝物
それを追う君のまあるい目
こっちを見てよ
怒鳴り散らかす君の喉仏
思わず私を殴る君の大きな手
それが、私の大事なもの『君の大事にしてるもの』より
一連の二人の物語は佳境を迎える。ついに、飛んだのだ。レスポールが、空を。
怒りのボルテージがマックスにまで達し、いつまでも”私”を見ない”彼氏”についに我慢ならず手をかけた。「ねぇ!!」晴れた空をレスポール。”君の宝物 Fry away”
宝物は”私”であって欲しかった。
その後の経過が実によく伝わる歌詞だからこそ、彼女の見せた[大事なものを宙に投げ打つと言う”残忍な行為”]が如何なるものだったかをじっくりと考察したい。
それを追う君のまあるい目
”君”以外の初めての描写が”目”だ。彼が驚愕している様子と、そして彼女の視線はあくまでも宙を舞うレスポールではなく”彼氏”にあることを指し示している。
こっちを見てよ
ようやく私を見た彼氏。だが、そこにいる彼氏は事態の深刻さになど気づきもしない。ただ彼女のした行為に怒るだけだ。「気づけなくてごめん」そんな言葉は存在しない。
彼はただ、ただ怒る。
怒鳴り散らかす君の喉仏
ただ怯えるのみならば、人は喉仏なんぞ見やしない。彼女は理解している。”自分のしでかした行為”と”この後に待ち受ける二人の運命”を……。
全て理解した上でまっすぐ彼を見つめ、そして喉仏を見たのだ。
思わず私を殴る君の大きな手
それが、私の大事なもの
ようやく私を見た彼はついに手を出した。二人の関係はもう、これでおしまいだ。
その後に続く”それが、私の大事なもの”の”それ”が一体何を指すのか。実はこれだけが最後まで歌詞を読み進めてもわからなかった。
ただ、僕なりにこうではないかと言う解釈ができたので、それを伝えたい。
僕の解釈では下記のようになる。
思わず私を殴る
君の大きな手、それが私の大事なもの
曲中では上記のように一度”切れる”。
これは[私の大事なものである君の”その手”が、レスポールではなく”私”のためだけの手であれば…と言う彼女の最後の憂いである]しかし、そうではなかった。
彼の手はいつも、ライダースやジョーダン6、ヴィンテージのTシャツ、あのギタリストのサイン入りのエフェクター、GTO全25巻。そしてレスポールにあった。
決して私ではない。
私が大事にしているものは君だけなのに。君ときたらさぁ。
君のそばには私がいればいいでしょう?
君の大事なもの ゴミにしか見えないし
私がそばにいれば何もいらないと、言って『君の大事にしてるもの』より
再度、彼女は問いかける。
君のそばには私がいればいいでしょう?
だって、君の大事なものゴミにしか見えないし。
冒頭の問いかけが呼び起こされる。
「私とそのレスポール(ゴミ)どっちが大事?」
「お前に決まってんじゃん」
「違うの。私がそばにいれば何もいらないと……言って。」
彼はそんな器用なことを言える男ではない。それはこれまでの付き合いの中で十分理解した。そして、それを受け入れた。つもりだった。だが、実際は受け入れられなかった。
耐えきれなかった。
だから、私は君のレスポールを投げたの。気付いて欲しかったから。
でも、ダメだった。気づかないから、君は、その手で私を殴ったの。
バラバラのレスポール
もう元には戻せない
残ったのは空っぽな私
ねぇ、レスポールあんたとさ、初めて目があった気がしたよ
『君の大事にしてるもの』より
バラバラになったのはレスポールなのか。それとも二人の愛なのか。
もう二人の関係は戻らないのか。バラバラのままなのか。その答えははっきりしている。なぜなら彼女はもう”空っぽ”だ。そこには無い。恋も、愛も、未練も無い。何も無い。
完璧なまでに見切りをつけた、女性がそこにいる。
ねぇ
あんたとさ、初めて目があった気がしたよ
こうやって見ると綺麗だね、あんた
君が”夢中”になる気持ちが今ならわかるよ
でも、もういいの。今更そんな男。
以上が……。SHISHAMOである。
身に覚えのある男性は即座に行動を改めた方が良い。身に覚えのある女性は即座にその思いを彼に告げるべきだ。取り返しのつかないことになる。レスポール放り投げる羽目になる。残忍な元恋人に晴れてノミネートされることになる。
ところで、その行為の是非はともかくとして、この世の”悪”や”残忍な行為”の裏には必ず理由がある。一概に悪と決めつけて非難することは何の益にもなり得ない。
帝国を建設して維持するにはたいてい、大量の人を残忍に殺戮し、残り全員を情け容赦なく迫害する必要があった。
サピエンス全史(上)ー文明の構造と人類の幸福:著者ユヴァル・ノア・ハラリ より
いじめの根幹が”自己主張”であったり、”自衛”であったり。そして彼女の行為が心の”アンチテーゼ”であったように、一方向からのみの情報を元に”物事を結論づける”のは非常に危険だと言うことを文章の締めくくりにしたい。
え、何が言いたかったのだろう。
今日のところは、これにて。